外国法人の日本支店申告について現地法人と比較しての有利不利の検討
1.日本支店の申告
支店の決算は本社と同一法人のため本支店合算しての決算書が作成されます。
支店損益には支店経由の売上と経費が含まれます。特に経費は支店支出分だけではなく本社から直接支出した分(立替経費など)や日本支店を管理するための共通経費も配賦されます。このため本社との調整事項が多く、決算処理が複雑になります。
支店の申告は本社の決算書を添付するため、本社の資料を日本語に翻訳する必要があります。支店申告は本社の決算確定後に行うので、申告期限の延長手続をしますが、延長期間にかかる利息が発生します。
支店が日本で納めた所得にかかる税金については納税証明書を貰って一定の計算の元に本社で税額控除を受けることができます。
支店の都民税均等割(法人地方税)の税額は本社の資本金が適用されるため多額になります。たとえば本社の資本金が10億円を超え、日本支店の職員数が50人以下のときは年額95万円。これは所得に対する税額ではないため韓国法人税の外国税額控除の適用除外になるものと思われますので、損金経理して経費にするしかありません。
また本社の資本金が1億円を超えると外形標準課税の適用対象となり納税額が増える傾向にあります。
支店は外国法人のため特定の売上(ソフトウェアの権利譲渡や使用料など)について所得税が源泉徴収され、本社で外国税額控除の適用を受けるために顧客経由で税務署から納税証明書を発行してもらう必要があります。
2.現地法人の場合
現地法人は日本の法人として存在しますから、本社の決算の影響は受けず独自に申告が出来ます。よって支店に比べて決算手続上本社との調整は少なくなります。
外国法人の支店と比較して一般的に信用度が高い面(事務所の賃貸契約など)があります。
現地法人の利益を本社に送金する場合は配当扱いになり、源泉所得税を納付します。納めた源泉税は親会社の申告で税額控除を受けることになります。
現地法人の都民税均等割りは現地法人の資本金が基準になりますから少額(資本金1000万円以下は7万円)ですみます。ただし、資金が不足する場合に親会社からの借入に対する利息の支払いについては過少資本税制の制約があります。
現地法人は売上の金額から税金を源泉徴収されることはありませんので、納税証明書を発行してもらうことで、顧客に手数をかけることはありません。
現地法人を清算する場合に時間と費用がかかります-解散手続きと清算手続きの最低2度の登記と2度の税務申告が必要になります。
訴訟事件の場合に親会社には直接影響はしません。
日本支店も現地法人も適用される税率は同じです。また日本支店も現地法人も本社あるいは親会社との取引については移転価額税制の適用対象になってきますので取引金額についてはご注意ください。