ホーム > 相続税 > (1)非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度とは、どういう制度ですか。
(2)-1 課税価額の80%に対応する相続額の納税猶予と言うことですが、猶予税額はどのように計算するのですか。
(2)-2相続税の納税猶予が制度化される過程で、猶予税額が免除されるケ-スが明確になりましたが、どういうケ-スですか。
(2)-3 納付猶予が取り消された場合の猶予税額の納付はどうなりますか。利子税の計算方法についても教えてください。

(1)非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度とは、どういう制度ですか。
(2)-1 課税価額の80%に対応する相続額の納税猶予と言うことですが、猶予税額はどのように計算するのですか。
(2)-2相続税の納税猶予が制度化される過程で、猶予税額が免除されるケ-スが明確になりましたが、どういうケ-スですか。
(2)-3 納付猶予が取り消された場合の猶予税額の納付はどうなりますか。利子税の計算方法についても教えてください。

Q(1)創設の内容
非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度とは、どういう制度ですか。
POINT
非上場株式等に係る相続税の軽減措置について、現行の10%減額から80%納税猶予に大幅に拡大する制度です。80%納税猶予制度は、平成20年10月1日以後の相続に遡って適用されます。

A
①納税猶予制度の仕組み
認定承継会社(中所企業における経営の承継の円滑化に関する法律12条1項の経済産業大臣の認定を受けた非常所会社で一定用件を満たす会社を言います。以下同じ)の代表権を有していた被相続人から、相続又は遺贈によりその認定承継会社の非上場会社等の取得をした一定のもの(以下「経営承継相続人等」といいます。)が納付すべき相続税額のうち、その非上場株式等(相続開始前から即に保有していたものを含めて、その認定承継会社の発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分に限ります。以下「特例非上場株式等」といいます。)に係る課税価額の80%に対応する相続税額については、その経営承継相続人の死亡等の日までその納税を猶予する制度です(新措法70の7の2)。

②経営承継相続人の定義
「経営承継相続人」とは、中所企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第6条第1項第7号トに規定する経営承継相続をいいます(承継法規則6①七ト)。

③適用関係
非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度は、中所企業における経営の承継の円滑化に関する法律の施行日(平成20年10月1日)以後の相続又は遺贈により取得をする非上場株式等に係る相続税について適用されます(平成21年改正措法附則63)。
また、平成20年10月1日から平成21年3月31日までの間に開始した相続にかかる被相続人がその相続の開始直前に有していた財産の中に非上場株式等が含まれており、かつ、当該被相続人が当該非上場株式等にかかる会社の代表権を有していた場合には、当該被相続人からの相続又は遺贈(贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものに係る贈与を含みます。)により財産の取得をした分が提出すべき相続税の申告書の提出期限については、平成22年2月1にまで延長されます(平成21年改正措法附則65)。

Q(2)-1猶予税額の計算
課税価額の80%に対応する相続額の納税猶予と言うことですが、猶予税額はどのように計算するのですか。
POINT
納税猶予制度の適用により、経営承継相続人以外の相続人の税額に影響を与えないように計算することとなります。

A
①相続税の納税猶予の提要がないものとして、通常の相続税額の計算を行い、各相続人の相続税額を算出します(経営承継相続人以外の相続人の相続税額は、この額となります。)

②経営承継相続人以外の相続人の取得財産は不変とした上で、経営承継相続人等が、通常の課税価格による特例非上場株式等のみを相続するものとして計算した場合の経営承継相続人等の相続税額と、課税価額を20%に減額した特例非上場株式等のみを相続するものとして計算した場合の経営承継相続人等の相続税額の差額が、経営承継相続等の猶予税額となります。
なお、①により算出した経営承継相続人の相続税額からこの猶予税額を控除した額が経営承継相続人の納付税額となります。
具体的な算式:

納税猶予税額=経営承継相続人が対象株式のみを相続するとした場合の相続税額ー経営承継相続人が対象株式の20%のみを相続するとした場合の相続税額

Q(2)-2猶予税額の免除
相続税の納税猶予が制度化される過程で、猶予税額が免除されるケ-スが明確になりましたが、どういうケ-スですか。
POINT
①会社が破産等した場合、
②次の後続者に納税猶予対象株式を一括贈与した場合、
③納税猶予対象株式の時価が猶予税額を下回る場合(時価との差額分の免除)です。

A
その経営承継相続人が特例株式等を死亡の時まで保有し続けた場合は、猶予税額の納付を免除することとしています。
この他、経済産業大臣の認定の有効期間(5年間)経過後における猶予税額の納付の免除は、次の通りです。

①会社が破産等した場合
特例適用株式等に係る会社が債務超過に陥り、破産手続き開始の決定又は特別精算開始の命令があった場合には、株主たる猶予対象者に分配される会社財産はなく、納税の困難性にかんがみて、猶予税額の全額が免除されます。

②次の後続者に納税猶予対象株式を贈与して事業相続を図る場合
猶予対象者が、贈与税の納税猶予制度の適用を受ける次の後続者(経営者の親族)へ特例適用株式等を一括贈与する場合には、その適用を受ける特例適用株式等に係る相続税の猶予税額が免除されます。

③納税猶予対象株式の時価が猶予税額を下回中、事業を継続するため、その株式を譲渡した場合(時価上限納税)
納税猶予対象株式の時価が猶予税額を下回るほど下落した場合に、猶予税額の全額納付を求めると、事実上、事業相続のための株式譲渡が困難となります。
そこで、(イ)同族関係者の以外の者に対して、(ロ)保有する特例適用株式等を一括して譲渡した場合には、その譲渡対価又は譲渡時の時価のいずれか高い額が猶予税額をした下回るときは、その差額分の猶予税額が免除(譲渡対価又は譲渡時の時価のいずれか高い方を上限として納税)されます。
なお、①②の場合に猶予された相続税額を免除するとされる額のうち、過去5年間の「経営承継相続人及び生計を一にする者」に対して支払われた配当及び過大役員給与等に相当する額は免除の対象となりません。
これらの規定は、通常、精算の場合及び配当等について納税を求めることで、多額の配当等を支払い猶予税額の免除目的の計画倒産を防止するためにもうけられたものです。

Q(2)-3  納税猶予の取消しと利息税の納付等
納付猶予が取り消された場合の猶予税額の納付はどうなりますか。利子税の計算方法についても教えてください。
POINT
納税猶予が取り消された場合には、利子税と併せて納税することが求められます。

A
①経済産業大臣の認定の有効期間(5年間)内に、経営承継相続人が代表者でなくなる等、当該認定の取消事由に該当する事実が生じた場合には、猶予税額の全額を納付しなければなりません。

②①の期間経過後において、特例適用株式等の譲渡等をした場合には、特例適用株式等の総数に対する譲渡等をした特例適用株式等の数の割合に応じて猶予税額を納付します。

(算式)
猶予税額を納付額
=猶予税額X特例適用株式等の譲渡株数/特例適用株式等の総数

③利子税の納付
納税猶予の取り消しにより、猶予税額の全額又は一部を納付する場合には、相続税の法定申告期限からの利子税を合わせて納付します。
この場合に猶予税額と合わせて納付すべき利子税の税率は、特例により年2.2%(日銀の基準割引率0.5%の場合)となります(利子率の本則税率を年6.6%から年3.6%に引下げ)

④担保の提供
相続税の納税猶予の適用を受けるためには、原則として、特例適用株式等の全てを担保に供
さなければなりません。

⑤継続届出書の提出
経営承継相続人は、経済産業大臣の認定の有効期間(5年間)内は毎年、その後は3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければなりません。

⑥租税回避行為への反応
そのた、次のような租税回避行為に対しても規制措置が設けられています。
(イ)相続開始前3年以内に経営承継相続人の同族関係者からの現物出資又は贈与により取得した資産の合計額の総資産に占める割合が70%以上である会社に係る株式等については、本特例を適用しません。
(ロ)経営承継相続人等の相続税等の負担を不当に減少させる結果となると認められる行為に対応するための措置が講じられます。